外観
JR神田駅東口から徒歩5分、東京メトロ丸の内線の淡路町駅や都営新宿線の小川町駅からは徒歩1分です。
建物は1926年に竣工され、東京都選定歴史的建造物になっています。
そこだけ時間が止まってしまったかのように、ビルとビルの間に挟まれた佇まいには趣を感じてしまいます。
入口らしき扉が2つありますが、向かって右側が入口、左側は出口になっています。
数年振りにお邪魔すると、あまりルールは守られていませんでした。
店内
店内は意外と広く見渡せ、大広間はまるで食堂のような庶民的な感じがあります。
席はテーブル席のみ、全66席となっています。
絶えずお客さんが訪れる人気店ということもあって、相席の案内もされるので苦手な方は配慮が必要になります。
相席といっても狭いところに詰め込まれるという感じではなく、近くの席が空けば、快く移動を案内してくれます。
顔も見知らぬ者同士が、席を隣り合わせに食を共にするのも、今なお残る下町情緒なのかも知れません。
メニュー
蕎麦は一通りどころか、あまり聞き慣れない料理名まで全部で30種類くらいはありそうです。
お品書きの裏面は、御飯物やアルコール類、焼き鳥などの蕎麦前もありました。
御酒
御酒は徳利とお猪口に、冷やで提供されました。
雰囲気ある店内では、こういう定番スタイルが一番良く似合います。
御酒には、蕎麦味噌が付いてきます。
味は濃厚で甘辛く、御酒のお供として良く合います。
わさびかまぼこ
酒のつまみにと注文しましたが、一般的な蕎麦屋では「板わさ」と呼ばれますが、神田まつやさんの料理名表記はこうなっていました。
厚めに切られたかまぼこは半分に切られ、生わさびと香り良い醤油で食べます。
焼鳥
注文時には、タレか塩を選ぶことができ、タレでお願いしました。
表面には程よく焦げ目が付き、食感は柔らかく醤油のタレが非常に香ばしいです。
敷かれた葱は少し長めに切られ、同様に焦げ目の付いた表面が、葱の甘みを引き出しています。
そばがき
そばがきを注文すると、店名の入った大きな桶が運ばれて来ました。
老舗のお店では、こうした店名のロゴが入った器がつかわれることも多く、ついつい見入ってしまいます。
そばがきには薬味として、ネギ、本わさび、大根おろしが付いてきます。
蓋を取ると湯気が立ち昇り、大きく葉型に飾られたそばがきが、熱々のお湯の中に浮かんでいます。
口に入れた時は、表面がツルッとしていて、そばがき独特の荒々しさは全くなく、実に繊細な歯ごたえです。
汁と薬味にくぐらせると、スルリと喉の奥まで通り抜けてしまい、蕎麦の味を素直に感じることができました。
もり
盛られた蕎麦、薬味に蕎麦汁と実にシンプルな見た目ですが、雰囲気感があるお蕎麦です。
蕎麦汁は辛めですが、鰹だしがキリッと決まっていて香りは絶品そのもので、実にストレートで実直な印象です。
蕎麦湯と合わせて飲むと、非常に蕎麦の香りが強く美味しいです。
蕎麦はしっかりとした歯ごたえというのが第一印象です。
一本一本から強い主張を感じ、非常に角が立っている感じを受けます。
蕎麦の風味も良く、固めのお蕎麦は喉越しも抜群で、蕎麦汁との相性も非常に良いです。
あとがき
明治17年から続く老舗お蕎麦屋さんは、名前負けすることなく、美味しいお蕎麦を食べさせてくれました。
蕎麦や汁からは、実に真っ直ぐで素直な印象を受け、作り手側の蕎麦に対する思いのようなものを感じることができました。
外観、店内の雰囲気、蕎麦はもちろんのこと、おつまみやそばがきを含め、さすが名店だと感じさせてくれました。
グルメな文豪としても知られている「池波正太郎」も愛し、著書「むかし味」には、「まつやで出すものは何でもうまい。それでいて、蕎麦屋の本道を踏み外していない。」と書くほどです。
数年前にお邪魔したときは、年配の方が酒をつまみに蕎麦を楽しむ姿が店内で見られていましたが、最近ではインバウンドの海外の観光客と、学生のような子達で溢れていたので、時の流れは変わるものだと思ってしまいました。